「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊

5−3(3) ポリカーボネート(PC)

1999.05.07

keywords: polycarbonate, PC


 エンジニアリングプラスチックとして知られるポリカーボネートは衝撃に強く、またアクリル(PMMA)ほどではありませんが透明度が高いため、窓材として利用できる可能性があります。

ポリカーボネート(PC) の性質

 ポリ炭酸エステルとも言い、広義には [-O-R-O-CO-]n (Rは2価の脂肪酸または芳香族基)のように表されますが、通常は右図のような構造式のものを指します。比重1.2、PMMAと比較すると引張強さは同程度ですが良く伸び、耐衝撃性に優れます。しかし透明性はやや劣り、薄い青灰色がかかった印象を受けます。吸水性はPMMAよりやや小さく、樹脂の中では大きくも小さくもありません。弱酸や弱アルカリに耐性がありますが、アセトンなどの有機溶剤に溶けます。耐熱性は 135゚C程度で、代表的なエンプラ(注1)です。

ガス放出量

 ガス放出量 q はPMMAとほとんど同じ程度で、排気開始1時間後で 1.1E-3 Pam3/sm2、5時間で 6.1E-4 Pam3/sm2 です[8]。また、PMMAと同様に q は時間の平方根に反比例しているようです。ガスの主成分は水と思われます。

素材の形状と寸法

素材としては、丸棒(直径15〜200)やパイプ(外径13〜89)、板などが市販されています。括弧内の数値は一例です。

特徴と用途

 窓材としての用途が考えられますが、80゚C以下の温度で使用するのなら、PMMAの方が透明性が優れていますし、高温であればガラスと比較検討してみるべきです。100゚C程度で使用し、耐衝撃性が重要であるなら、PCに利点があります。樹脂製のビスナット(通称プラネジ、プラビス)はこのPC製のものが多いようです。少量であれば高真空まで使用できると思います。

 市販品としては、成型性に優れているためか、写真1に示すような真空デシケータがあります。上部の真空計(3−2参照)は私が上蓋に管用テーパねじを切って取り付けたものですが、PMMAほど脆くないので加工は容易でした。

以上

(注1) エンプラ(エンジニアリングプラスチック)とは、一般に100゚C以上でも使用できる(強度を失わない)熱可塑性樹脂の総称である。 


このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。