「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊

3−2 ブルドン管真空計

1998.11.12

keywords: Bourdon tube gauge


 差圧の力で金属などを弾性変形させ、その変位から圧力を測定する全圧計です。写真1に示すように(注1)測定子と表示部が一体になっており、丈夫であることから、工業計器として用いられます。ガスボンベの減圧器に付いている圧力計もブルドン管ですから、どこかで見たことがあると思います。ただし、圧力計は正圧を測定するため、変位は真空計の場合と逆向きです(注2)。

構造

 写真1からわかるように、構造はかなり単純です。右図に概念的に示します。真鍮やリン青銅のような銅合金の平たい筒を?字に曲げてあるのが測定子です。筒の中の圧力が周囲の圧力よりも低くなると、つまり真空になると、筒の先端は下向きに動き、逆に内圧が増加すると先端は上向きに動きます。紙の平たい筒を丸めて笛を付けた、クリスマス時期に出回るおもちゃを思い出せば、この動きは判ると思います。ブルドン管では、紙の場合ほど変位は大きくないので、歯車に変位を伝え、指針の回転角として表示します。

 上の説明は一般的なブルドン管についてのものです。腐食性のガスを取り扱う用途として石英製のブルドン管があるそうですし[3]、正圧用の工業計器では、変位を電気信号として取り出すことのできるものもあります。

特徴と用途

 大気圧から 1 kPa (10 Torr) 程度までの全圧を表示すること、構造が簡単で壊れにくいこと、電源を必要としないこと等が特徴です。これらのことから、真空デシケータやアスピレータで排気する真空系など、低真空領域での測定に広く用いられています。ただし、圧力を電気信号として取り出すことは、通常はできませんので、制御や自動記録には不向きです。このような場合には隔膜真空計などを用いる必要があります。

 真空用としては直径が40〜60mm程度のものが市販されています。弾性変形内に納まるように設計されていますが、製品や使用条件によっては若干の塑性変形を起こし、表示がずれてくることがあるようです。

接続方法

 市販品では取付部(継手)が G1/4 や G1/8 の管用テーパ雄ねじであるものがほとんどです。別のページで説明しているように、PTFEのシールテープを巻いて管用テーパ雌ねじに接続します。ねじを最後まで回してしまうと、表示面が期待する角度になりませんから、適当な角度で止めます。ねじが緩くて心配であれば、シールテープを1回余分に巻き直してから再度取り付けます。

利用例

 右の写真は市販の樹脂製真空デシケータの上蓋に管用テーパ雌ねじを切り、ブルドン管真空計を取り付けた様子です。コックの内径が小さいために、充分排気するの意外と時間がかかることが、真空計を取り付けたおかげで判りました。圧力の増加は記録していませんし、実際にはシリカゲルと併用していますから、漏れの量を正確には求められませんが、半年放置すると 数kPa 程度増加したことから、1E-6 Pa・m3/s (1E-5 Torr・L/s) ほどと思われます(注3)。

(注1) 通常は裏面からこのように内部を見ることはできない。これは、見やすいようにわざと裏蓋を切り取ってある。 (注2) この他に、測定する圧力領域に応じて、弾性変形させる部分を厚くしてある。 (注3) 吸着ガスの放出があるためこの値が全て漏れに起因するとは限らない。また、コックやOリング部からの漏れもあるから、真空計を取り付けた事による漏れの増加を示す値でもない。単に真空デシケータにおける圧力増加の参考値としてここに記載した。

以上


このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。