「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊

3−5 熱電対真空計

1998.12.18

keywords: thermocouple gauge


 ピラニ真空計と同様に、気体分子の熱伝導現象を利用する真空計です。ピラニ真空計よりも精度は劣りますが、安価であるため、中真空領域の圧力モニタとしてよく用いられています。

構造と原理

 測定子は右図の灰色で囲った部分で、白金やタングステンなどの細線に、熱電対が接着されています。この細線に電流を流すと発熱し、その熱は気体分子の熱伝導や細線を伝わる固体熱伝導、輻射によって放熱されますが、ピラニ真空計と同じように、気体分子が奪う熱量が圧力に依存することが原理です。

 仮に発熱量を一定に保つように制御した場合、周囲の圧力が高いと気体が奪う熱量が多く、細線の温度は低くなります。また、圧力が低いと細線の温度は高くなります。このような温度変化を熱電対によって検出します。市販品では熱電対の起電力を圧力に換算して表示するようになっています。

 細線径や長さ、動作条件などの詳細が明らかな資料が見あたりませんので、具体的な数値を挙げることはできませんが、市販品では、細線に流す電流を一定に保つ定電流型か、あるいは細線に印加する電圧を一定に保つ定電圧型の回路を採用しているそうです[3]。細線に流れる電流を I、細線の抵抗を R とすると、発熱量は I2R で表されますから、定電流型の場合、圧力が高いと細線温度は低くなり(注1)、発熱量はより小さくなるため、温度が変化する範囲が広くなると思われます。定電圧型の場合には、発熱量 V2/R から考えると、温度が変化する範囲は狭くなります。

特徴と用途

 ピラニ真空計と同じように、気体分子の熱伝導現象を利用していますから、測定できる圧力範囲も同程度で、1〜300Pa です。ただし、定温度で制御するピラニ真空計とは異なり、熱伝導真空計では細線の温度が変化するため、固体熱伝導や輻射による放熱量が圧力に依存し、精度はやや劣ります。しかし回路が単純であるため、比較的安価です。

 大気中でも焼損せず、圧力値を電気信号として取り出すことができますので、自動制御するような系の圧力モニタとしてピラニ真空計と共に広く用いられています。

接続方法

 メーカーや型番によって異なりますが、非測定系(真空側)へは、ゲージポートクランプ継手を介して接続するものが多いようです。また、一部のメーカーからは、超高真空用のコンフラットフランジが接続された製品も市販されています。

(注1) 一般に金属の比抵抗値は温度と共に単調に増加するため、温度が低くなると抵抗値も小さくなる。

以上


このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。