「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊
1999.1.17
keywords: Geissler tube, discharge
古くから使われてきた圧力のインジケータです。 定量性はありませんが、視認性が良く、漏れ検査にも用いることができます。
構造と原理
右上図に示すように、両端に電極がある閉じたガラス管と、非測定系(真空槽)に接続するためのガラス管から構成されています。電極の間隔は7〜10cm、閉じた方のガラス管内径は15〜20mm程度が一般的な寸法です。
大気側の端子を介して2つの電極間に10kV程度の高電圧を印加すると放電が起きます。放電の形状から次のように圧力を判断します。一般的な真空の教科書では直流電圧を印加した場合の形状が記載されていますが、実験室では交流を用いることが多いため、交流を印加した場合について説明します。写真も参考にして下さい。
大気圧 放電しない 10kPa(100Torr) 紐状の放電 1kPa( 10Torr) 電極間で幅広く放電 100Pa( 1Torr) 電極の裏側まで薄く放電 10Pa(0.1Torr) 少し明るくなり、管全体で放電 1Pa(10mTorr) ガラス管が蛍光を発する
上記の形状と圧力の対応は目安です。直流の場合に見られるファラデー暗黒部は必ずしも明瞭ではありませんので、光っている部分の範囲と強さに注目した表現にしてあります。
特徴と用途
定量性が無く、圧力値を電気信号として取り出すこともできませんので、自動制御するような系には向きません。手動でバルブを操作するような油拡散ポンプの背圧ラインや、ピラニ真空計の補助として併用するような場合に用いられます。ピラニ真空計や熱電対真空計よりも安価です。
視認性が良いことが特徴で、慣れれば一瞥するだけで粗引きから主排気に切り替えるタイミングを計ることができます。しかし、明るい場所では蛍光を発しているのか、圧力が高すぎて放電していないのかを判断し難いため、注意が必要です。
放電色は気体によって異なることを利用し、中真空領域での漏れ検査に用いることもできます。空気の放電色は上の写真に示したように赤紫色ですが、水蒸気があると白っぽくなります。ポンプの主バルブを閉じて、赤紫色になれば空気が漏れていると思えばよいでしょう。白っぽいままであれば、吸着ガスが放出されているだけである可能性が高くなります。
漏れている箇所を探すには、容器やラインの外側から、洗浄瓶等を用いて少量のエチルアルコールをかけます。エチルアルコールの放電色は青白色であるため、直ぐに判ります。
長時間放電し続けると、写真に示すように、ガラス管内壁に茶色の汚れが目立つようになります。汚れの主成分は炭素であると思われ、バーナーを用いて空気中で加熱すると除去できます。真空ポンプの油蒸気があるような系で使用する限り汚れは避けられませんが、圧力を見たいときだけ、電源のスイッチを入れるようにするとかなり低減されます(注1)。
接続方法
放電させるための簡便な高電圧電源としては、右下の写真に示すようなインダクションコイルとネオントランスがあります。インダクションコイルを用いる場合には、スパークギャップを適当に調節(3〜5cm程度)して、結線図(a)のようにガイスラー管の電極に直結します。ネオントランスを用いる場合には、結線図(b)のように一次側(AC100V側)に100W程度の白熱球を直列に接続し、二次側はガイスラー管の電極に直結します。白熱球は、圧力が比較的高くて放電電流が多い場合に、トランスの焼損を防ぐ保護素子の役目を果たしますが、明るさによって圧力領域がある程度わかりますので、遠目にもよく見えて便利です。トランスの二次側容量は10kV-10mA程度で充分です。
電極には高電圧が加わりますから、感電しないように防護しておくことを薦めます。管材質がガラスであることや、非視認性なども考慮すると、ガイスラー管の周囲をある程度覆って暗くしておき、隙間から覗くようにするとよいでしょう。
国産の市販品では、非測定系への接続口は外径15mmまたは18mmのガラス円管ですから、ゲージポートを介して接続します。
(注1) 押している間だけ通電するような押しボタンスイッチが便利である。
以上
このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。