「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊
1998.10.26
keywords: gauge port, vacuum furnace, infrared lamp heater
概要
ゲージポートとは、真空計などの測定子を配管や真空槽に取り付けるための継手です。真空測定子の先端、つまり真空側の部分は、大別すると以下のような形状になっています。これらの中で、先端が単純な筒状になっている測定子を受けるのがゲージポートです。なお、管用テーパネジについては、別の項で説明します。
先端の形状 | 接続先 | 例 |
管用テーパ雄ネジ | 管用テーパ雌ネジ | ブルドン管 |
直管 | ゲージポート | ピラニ、電離真空計 |
真空用フランジ | 同左 | B−Aゲージ |
規格と材質
ゲージポートに定まった規格はありません。各真空機器メーカから独自の製品が販売されています。しかし、国内では管直径が15mmと18mmの測定子がほとんどですので、どちらかのゲージポートがあれば間に合うでしょう。市販されているゲージポート本体の材質はSUS304ですので、配管や真空槽への溶接も問題ありません。
構造
市販品の一例(18mm用)を写真1に示します。これを組み立てて測定子を挿入した状態は右図のようになります。Oリングは内側で測定子(ゲージ)を、下部で本体のテーパ部をシールしており、金属製のリングを介して袋ナットがOリングを押さえつけています。リングやポート本体、袋ナットの形状はメーカによって異なりますが、基本的にはどの製品もこのような構造になっています。
他の継手との接続
ゲージポートを配管や真空槽に直接取り付けずに、フランジに接続する場合があります。この方が、フランジの数は増えますが、汎用性があるためです。上に述べたように、市販品の本体はSUS304製ですので、同じ材質のフランジであれば容易に溶接することができます。また、写真2に示すように、クランプ継手と一体になった市販品を利用するのもよいでしょう。
インチサイズのゲージポート
米国製の測定子では、通常は管直径がインチ規格です。このような場合には、それに応じたゲージポートを使うしかありません。管の材質がガラスであれば、直径15mmや18mmのガラス管に溶着するという方法もあります。
取付時の注意
同じ18mm用のゲージポートであっても、メーカーによってOリングの内径が異なります。少しきつめの、つまり内径の小さいOリングを使用しているゲージポートでは、袋ナットを本体から外さずに測定子を差し込むのは止めましょう。面倒でも、袋ナット、リング、Oリングを一旦外してから測定子に差し込み、本体に取り付けた方が安全です。特に測定子がガラス製の場合、無理に力をかけると割れてしまうかもしれません。
ゲージやポート本体のシール部分に傷が無く、健全である場合には、真空グリスを塗る必要はありません。Oリングを挿入するときにすべりを良くする目的で、真空グリスをやむを得ず使用するのなら、米粒大の量で十分です。
応用例
左の写真は、外径が18mmの透明石英管をゲージポートに接続し、外部から赤外線を照射して、管内の試料を加熱する小型の高真空炉です。石英は赤外線をあまり吸収せず、熱伝導率も比較的小さいことと、内部が真空であることから、試料を700゚Cに加熱してもゲージポートのOリングは健全に保たれています。
市販品の選び方
あるメーカのポートは袋ナットを回しやすいけれども、Oリングが小さくて測定子を差し込み難いとか、別のメーカでは測定子は差し込み易いけれども袋ナットの直径が小さく、厚みも薄いために指で回しにくいとか、一長一短です。実際に使ってみて、納得のいく製品を購入するのがよいのですが、短所だらけの製品は無さそうですので、入手しやすい製品を使ってもよいと思います。
このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。