「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊

4−6 VCRとSwagelok

1998.10.29
2000.04.27 rev.1

keywords: vacuum joint, VCR, Swagelok


概要

 VCRは CAJON社の、Swagelok は Crawford Fitting社の商品名で、共に小口径のガス供給配管継手として用いられています。 Swagelok は安価で、VCRはシール性能に優れているという特徴があります。双方ともメーカー品であり、他製品と互換性が無いため、一般的ではありません。詳細はカタログ[C6]や他メーカーの同等品を参照していただくこととし、ここでは、このような製品があることを紹介する程度に留めます。

構造

 右図に示すように、VCRはガスケットでシールする構造をしており、コンフラットフランジと少し似ています。但し、雄ナットと雌ナット(袋ナット)でグランドと呼ばれるエッジ部を締め付けるようになっている点と、エッジが丸みを帯びている点が異なります。ナットで十分な締め付けが可能なのは、口径が小さいためと思われます。全て金属製であるために高温のベーキングが可能であり、また、シール性も良いため、超高真空系へのガス導入配管用継手として用いることができます。

 Swagelok のシール方法は、右図に示すように、フロントフェルールと呼ばれる穴の開いた円錐形のさやの先端を、挿入した管の外面と密に接触させ、かつ、フロントフェルールの円錐面をボディ内面に密に接触させることです。この接触させる力は、バックフェルールがフロントフェルールをボディに押しつけることによって得ています。図の右側はフェルールやナットを省略していますが、同じ構造です。ただし、この右側が管用テーパねじや径の異なる Swagelok である製品も多数あります。挿入する配管の材質をあまり選ばないという利点がありますが、シール性能はVCRに較べると劣るため、使用可能なのはせいぜい高真空系までです。

規格と材質、特徴など

 メーカー品であるため、規格や材質の詳細はカタログ[C6]を参照して下さい。下の表に簡単な仕様をまとめておきます。適用管外径は一般的なもので、これ以外にもあります。大ざっぱに言えば、VCRは超高真空用、Swagelok は高真空用であり、いずれも高圧に耐えることができるため、真空槽へのガス供給配管の継手として適しています。

 継 手 VCR Swagelok
適用管外径(インチ) 1/16, 1/8, 1/4, 3/8, 1/2, 5/8, 3/4, 1 1/16, 1/8, 3/16, 1/4, 5/16, 3/8, 1/2, 5/8, 3/4, 7/8, 1
適用管外径(ミリ)   3, 6, (8), 10, 12, 18
材質 SUS316 真鍮、ナイロン、 SUS316、テフロン等(フェルールを含む)
ガスケット 銅、テフロン、銀メッキニッケル  
使用限界温度 537゚C(銅ガスケットの場合)  
使用限度圧力 160kgf/cm2以上(管径等に依存) 148kgf/cm2以上(管径や材質によってはもっと低い)
種類 ティー、エルボ、クロス、Swagelokとの変換継手、他 NPTおねじ、同めねじ、管用テーパおねじ、同平行おねじ、ティー、クロス、径違いニップル、エルボ、他
管との接続 グランドを溶接 ボディ差込
管材質 SUS316, SUS304 問わない
繰返し使用 可(ガスケット交換)

他の継手との接続

 VCRの場合は、グランドをフランジに溶接するのが一般的だと思います。Swagelok の場合には、使用する圧力範囲によって異なりますが、中真空までなら、管用テーパめねじをフランジや真空槽に切り、Swagelok - 管用テーパおねじ の継手を取り付ければよいでしょう。高真空で使用する場合には、フランジに管を溶接または銀ロー付けし、両端が Swagelok の継手を取り付けます。あるいは、片方がOリングでシールする構造の Swagelok 継手を利用しても良いでしょう。

 バルブに接続する場合には、Swagelok の継手が付いた製品を用いると便利です。NUPRO社やWHITEY社が製造しています。VCRの継手が付いた製品は見あたりません()ので、差込溶接できるバルブにグランドを溶接しなければなりません。

(*rev.1) いくつかのバルブではVCR継手が付いているものがあります。お詫びして訂正致します。

取付方法

 カタログ[C6]に記載された方法で取り付けなければなりません。

材質の組み合わせ例

 VCRはグランドと溶接するため、管の材質は SUS304 や SUS316 に限られますが、Swagelok は差し込むだけなので、材質を選びません。メーカーは推奨していないかもしれませんが、私は真鍮製の Swagelok 一式に、フェルールだけナイロン製に交換し、焼き鈍し銅管やウレタンチューブを接続しています。真鍮を用いている理由は、せいぜい高真空までしか使用しないことと安価なためです。銅管は切断時の僅かな歪みや傷などが原因で、漏れが発生することが多いのですが、ナイロン製のフェルールを使用すると、比較的良好な気密性が得られます。

Swagelok の気密性

 メーカーの仕様とは全く異なっているかもしれませんが、私の経験では、上に述べた焼き鈍し銅管+ナイロンフェルールでは 1E-7 Torr・L/s 程度の漏れがあります。これ以上の気密性を要求する場合には、滑らかなステンレス管とステンレス製の(もちろんフェルールも) Swagelok を用いるか、VCRや他の高シール性継手を用いるべきでしょうが、常時正圧となっていて、一時的にしか高真空に排気しないような配管(注1)や、中真空以下の小口径配管には十分な気密性があると言えます。

(注1) ナイロンフェルールを常時正圧である配管に使用することは危険なので十分注意すること。私は、ゲージ圧が1kgf/cm2 以下の配管にしかナイロンフェルールを使用しないようにしている。

以上


このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。