「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊

C−4 水道用硬質塩化ビニル管と継手の規格

1999.04.26

keywords: PVC, unplasticized polyvinyl chloride, JIS, K6741, K6742, K6743


 JISで規定されている硬質塩化ビニル管(K6741)、水道用硬質塩化ビニル管(K6742)および水道用硬質塩化ビニル管継手(K6743)の主な規格について説明します。

分類と主な性質

 JIS K6741 では一般流体輸送用の硬質塩化ビニル管(VPとVU)が、JIS K6742 では水道用硬質塩化ビニル管(VPとHIVP)が規定されています。K6741 のVPは、K6742 のVPに較べて使用圧力が高く(1.0MPa)、規定されている呼び径の範囲が広く(13〜300)、また厚さや寸法許容差、定尺等も若干異なっていますが、K6742 のVPが流通していることと、口径の大きいVP管を真空配管に使用しないと思われることから、以下ではVPとHIVPについては K6742 に、VUについては K6741 に従って説明します。なお、これらの規格は真空(管内が負圧)で使用することを想定していないと思いますので、ご留意下さい。

 VP、HIVPおよびVUには可塑剤は添加されておらず、いずれも安定剤と顔料を添加した硬質ポリ塩化ビニルです。ただし、HIVPには改質剤を添加して、耐衝撃性を高めてています。顔料は外観から材質を区別するためで、VPとVUは灰色、HIVPは暗い灰青色(藍色に近い)をしています。

 VPとVUの比重は 1.43g/cm3、HIVPの比重は 1.40g/cm3 です。定尺は4mですが、呼び径40以上のVPとHIVPには4mと5mがあります(ただし、5mモノが流通しているかどうかは知りません)。20゚Cにおける引張り強度は 49MPa 以上(VP)で、使用圧力は 0.75MPa(VPとHIVP)と 0.6MPa (VU)です。主要な相違を以下の表に示します。

 管の種類  VP HIVP   VU
 --------------------------------
 比 重     1.43  1.40    1.43
 色         灰色 灰青色 灰色
 使用圧力   0.75  0.75    0.6  MPa
 --------------------------------

管の規格

 VPとHIPの呼び径の範囲は13〜150で、VUでは40〜800ですが、真空配管として利用するのはせいぜい呼び径50以下でしょう。ただし、配管以外の用途、例えば真空部品を保管する容器やフランジを固定しておく台など、もあると思いますので、VUについては比較的口径の大きい規格も以下の表には記載し、これら以上の呼び径については省略します。また、寸法許容差など、ユーザーがあまり参照しない数値も省略します。

 種類(1) 呼び径 外径 厚さ(2) 内径(3) 質量(4)
  -----------------------------------------------
 VP    13  18  2.5    13    0.174
      16(5)  22  2.7    16.6  0.256
      20   26  3.0    20    0.310
      25   32  3.5    25    0.448
      30   38  3.5    31    0.542
      40   48  4.0    40    0.791
      50   60  4.5    51    1.122
     (以下のVP省略)
  ----------------------------------------------
 VU   40   48  1.8    44.4  0.413
      50   60  1.8    56.4  0.521
      65   76  2.2    71.6  0.825
      75   89  2.7    83.6  1.159
     100 114  3.1  107.8  1.737  
     125 140  4.1  131.8  2.739
     150 165  5.1  154.8  3.941
     200 216  6.5  203    6.572
     (以下のVU省略)
  ----------------------------------------------
 (1) HIVPの規格は質量を除いてはVPと同じである。ただし、VP16は無い。
 (2) VUとVP16で最小値を、VP16以外のVPでは基準寸法を示す。
 (3) 外径と厚さから求めた参考値
 (4) 1m当たりの値(kg/m)で、K6742に記載されている参考値(比重1.43)
 (5) K6742では規定されていない。この欄の値はK6741による。

 VP(HIVP)とVUの寸法上の相違点は、内径が異なることです。これは、外径が同一寸法であるのに対し、使用圧力が異なっている、つまりVUの方が肉厚が薄いためです。VPの呼び径は実際の内径にほぼ等しいのですが、VUは呼び径よりも内径の方が大きくなっています(注1)。なお、写真1に示したように、管の表面には記号や呼び径などを印字することになっていますので、どのような管かは容易に判別することができます(注2)。

 配管用炭素鋼鋼管 SGP (JIS G3452) とVP管の外径等を下表に示します。やや無理のある(特に 32A) 対照表ですが、真空ポンプの管状排気口外径が SGP の外径に近い値であるものが多いので、参考になるかと思います。

  -----------------------------------------------------
  SGP 呼び     10A   15A   20A   25A   32A   40A   50A  
      外径    17.3  21.7  27.2  34.0  42.7  48.6  60.5
      内径    12.7  16.1  21.6  27.6  35.7  41.6  52.9
  VP  呼び径  13 16 20 25 30 40 50
   外径    18 22 26 32 38 48 60
   内径  13 16 20 25 31 40 51
  -----------------------------------------------------
  (注)内径は外径と肉厚からもとめた参考値

管用継手

 上記管用の各種継手が JIS K6743 (水道用硬質塩化ビニル管継手)で規定されており、チーズやエルボなどは入手が容易です。この継手はJISでは水道管用と明記されていますが、VPとVUは外径が同じですから、VUにも使用できるはずです。ただし保証外ということになるでしょう。

 種類は、硬質塩化ビニル管継手(記号TS)と耐衝撃性硬質塩化ビニル管継手(記号HITS)の二種類です。両者はVPやHIVPと同様に色で区別できます。

 使用する頻度が多いと思われるエルボ(右図(a))とチーズ(右図(b))について、主要な寸法を下表に示します。図はどこの寸法かを分かり易くするためのものであって、実際の形状とは細部が異なります。また、チーズは異径用(3方のうち1方の径が他の2方の径と異なるもの)があるため、呼び径は20X20(同径)や30X25(異型)のように表しますが下表には同径用の寸法のみを示しました。管を差し込む部分はテーパがついており、開口部の内径(下表では「開口径と」表示)は適用管外径より僅かに大きくなっています。「深さ」とは、管を差し込む部分の長さを表します。

呼び径 管外径 開口径 深さ テーパ D  H
-----------------------------------------------
 13  18  18.40   26.0   1/30   24.0  36
(16  22   22.4    31            29      )(1)
 20  26  26.45   35.0   1/34   33.0  50
 25  32  32.55   40.0   1/34   40.0  58
 30  38   38.60   44.0   1/34   46.0  65
 40  48   48.70   55.0   1/37   57.0  82
 50  60   60.80   63.0   1/37   70.0  96
 (以下省略)
-----------------------------------------------
(1) JISでは規定されていないため、相当する市販品を実測した

 例えば、呼び径25の管をチーズで接続する場合、チーズの呼び径は25X25で、管の端から40mmが継手の中に収まります。ただし、深さの許容差は +4mm, -0.5mm で、Hの許容差は +5mm, -1mm ありますから、実際には現物に合わせて管を適当に切断し、組み立てる方がよいと思います。

 この他の継手としては、ソケット、径違いソケット(呼び径が1〜2段階異なった管を接続)、45゜エルボ、異径チーズ(JISでは単にチーズと表記)、90゜ベンド、45゜ベンド、Sベンドなどがあります。片方が管用平行めねじ(Rp)や管用平行おねじ(R)になっている継手もありますが、ねじ部がインサートであるため、真空配管用には不向きでしょう。

管の入手と価格について

 日曜大工品を販売しているある小売店では、呼び径 13〜50程度までは水道用硬質塩化ビニル管(VP)を、 それ以上の呼び径では硬質塩化ビニル管(VU)を扱っていました。定尺は 4m (呼び径40以上の水道用硬質塩化ビニル管は 4m または 5m)ですが、 1m に切断した管もありました。店によっては品揃えが若干異なるようですが、小口径配管を組むのに困ることは無いでしょう。

 価格は重量に比例するようです。上記の小売店で定尺(4m)の価格を折角調べた(1999.4)ので、右のようにグラフにしてみました。軸が対数なので直線性が良いように見えますが、この直線(500円/kg)から1〜2割ずれているものがあります。HIVPは同じ呼び径のVPに較べると3割程度高いようです。これは定尺価格の一例であり、短く切断した管は割高なことや、入手する店によって異なることに注意して下さい。理化学機器の小売店からも呼び径40程度までのVPに相当する管を入手できますが、かなり高価なようです。

 ところで、市販されているVP16というPVC管は、水道用とは表記されているもののJIS記号は書いてありません。VP16は K6741 でのみ規定されており、K6741 と水道用とは同時に表記できず、かと言って K6742 と書く訳にはいかないためでしょう。同様に、TS16の継手も市販されていますが、JISとは書いてありません。呼び径16は15Aの鋼管に相当しており、需要は多いと思います。どうして K6742 ではVP16を規定しなかったのか疑問です。

使用上の注意

 切断は金ノコで容易にできます。継手との接続は専用の接着剤を用います(5−3を参照して下さい)。JISではねじを切らないように注意していますが、「水道用」の管を真空配管という他の目的に用いるのですから、規定外を承知の上なら外径を1mm程度削ったり、ねじを切っても構わないでしょう。使用にあたっては、有機溶剤と日光を避けることが必要です。

(注1) ここに示していない、呼び径の大きい管については必ずしも当てはまらないが、同じ呼び径であれば、VUよりもVPの内径の方が大きい。 (注2) 水道用硬質塩化ビニル管(VPやHIVP)には「水」という漢字に似た記号が印字されており(写真1参照)、硬質塩化ビニル管(VP)と区別することができる。もっとも、区別できなくても真空配管用としては問題無い。


このページは、高木郁二が担当している京都大学工学部物理工学科の講義・実験を補う資料として作成したものです。ご意見・お問い合わせはこちらまでお願いします。