京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻
核材料工学研究室

放射性廃棄物のより安全な処分を目指して
~アクチニド元素や核分裂生成物の溶解度や化学状態に関する熱力学的研究~

放射性廃棄物を出来る限り長い間閉じ込めるために、人工的に作られた幾重もの障壁(バリア)を備えるような工学的対策が考えられています。 また地下深部の地層が本来持っている物質の閉じ込め力を利用することは言うまでもありません。そのような地層処分は既存技術で可能なのか、現状で十分安全といえるのか。 これまでに様々な角度から多くの研究、それに基づく議論と改良が積み重ねられ、 技術的信頼性が確保されてきた今日ですが、更に信頼性の高いあり方を目指すことが重要です。
 我々が進めている研究課題は、放射性核種の物理化学的な挙動を熱力学的に理解することが中心です。 特に、3価および4価金属イオンであるプルトニウム、ウラン、トリウム、アメリシウムなどのアクチノイド元素や、ジルコニウム、セシウム、ヨウ素などの核分裂生成物に注目しています。 これらの放射性核種は、地下水中で様々な要因のもとで非常に複雑な挙動を見せることがあり、 科学者の間でも統一的見解が得られていない現象がまだ多くあります。 自然環境でのこうした核種の挙動を予測しうる基礎を築くことが、 地層処分の信頼性を向上させることにもつながります。 主な研究課題は以下の通りで、幾つかの最先端の研究は欧米やアジア、 国内の研究機関と共同で進められています。
高レベル放射性廃棄物多重バリアシステムの概念図。
電気事業連絡会発行の「原子力・エネルギー図面集2010年版」より引用許可を頂いて引用しています。
高レベル放射性廃棄物多重バリアシステムの概略図(原子力・エネルギー図面集2010年版 より)


アクチノイド元素にかかわる熱力学的研究

 高レベル放射性廃棄物およびTRU廃棄物に含まれる長半減期の放射性核種は様々な化学反応プロセスを経て地下水中を移行します。移行挙動をより正確に予測するためには、地下水中の放射性核種の化学状態を把握することが重要です。以下の図に、深度300m以深で想定される放射性核種の主な反応を示します。それぞれの枠をクリックすると研究の説明にジャンプします。 無機/有機イオンとの錯生成反応 コロイドの生成 岩石・鉱物への収着反応 沈殿溶解反応 多核錯体生成を伴う加水分解反応 フミン酸との相互作用


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