京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻
核材料工学研究室

燃料デブリの性状把握
福島第一原子力発電所事故において融解したウラン酸化物が一次冷却水や注入水と接触することにより、核分裂生成物(FP)や放射化物等を含む高放射能汚染水となりました。汚染水循環処理には従来の知見に基づいて吸着塔や沈殿槽が採用され、セシウムなどが連続的に回収されていますが、吸着樹脂等に捉えられた核種の種類や量についての詳細な分析データはまだ極めて少ないのが現状で、将来、予想と異なる分析結果が出れば、その原因究明とともに処理・処分方法の改良に反映させなければなりません。



 特に当初、注入水として実海水が用いられたことから、デブリ燃料と海水混じり水との接触時を想定し、FPがどのような溶解挙動をとったかを評価することは重要ですが、様々な懸濁物や微粒子を含む実海水における核種の化学状態について検討した例は殆どありません。

 一方、汚染水および処理水の放射能分析では採取場所によって核種の種類・濃度が異なることが明らかになりつつあります。しかし、処理・処分方法の検討には、更なるデータの蓄積とともに、それらの溶出挙動の理解が不可欠です。我々の研究室では、模擬燃料デブリを用いた海水への溶出実験について、浸漬試験を行い、様々な核種の溶出率の評価および海水中での化学状態を検討しています。



図 実海水への核種溶出挙動(RMは溶出率を表し、縦軸はデブリからのウランの溶出率で規格化したもの)

・酸化的雰囲気で調製した酸化ウランU3O8はよく溶ける(>15%)=ウラン水酸化物の溶解度上限に近い.
・Cs, Ba, IのU3O8と調和溶解する一方、還元的雰囲気で調製した4価UO2の酸化溶解反応は遅いため、初期に先行的な溶解が認められる.
・Zr,Ru溶出はU3O8より溶解が遅い一方、UO2固溶体からのU(IV)と同様の挙動が認められる.


Copyright (C) 核材料工学分野 All Rights Reserved.