表面活性化法による半導体の貼り合わせ
研究の背景
低被曝CT測定用のX線検出器として,Frischグリッド付検出器の提案をしています.この検出器の製作のために,SiとSiとを貼り合わせることを考えています.最初は,金属を介した接合などを検討していましたが,表面活性化法という手法があることが分かり,平成15年の10月末に,その装置を導入しました. 研究内容 平成15年の11月から,当時修士2回生の中山君が,SiとSiとを貼り合わせる実験を繰り返しました.これがなかなかうまくいかない.ようやく,12月17日の夕方に,最初の一組がくっつきました.奇しくも,この日は修士論文中間発表の予稿提出日で,提出したあとに成功しました. しかし,これで気を許したのか,その後,くっつかない日々がおよそ一月続きました.このまま,成功せずに修士課程が終わってしまうのか,と危ぶみましたが,ついに,平成16年1月20日に,ふたたび貼り合わせに成功し,その後は,歩留まりもあがっていきました.調子がよいときには,4組の接合を試みて,4組ともうまくいったこともありました. この貼り合わせたSiの比抵抗値を4端針法で測定し,また900度までアニールして比抵抗値測定を行いました.その後,それぞれのSiに抵抗性電極を蒸着によって作成し,2端子測定で電流ー電圧特性の測定を行いました.p型とn型のSiを接合した素子では,ダイオード特性が確認できました. pn接合はできた物の,放射線検出器とするためには,ダイオードとしての抵抗値が足りません.それ以前に,2枚のSi間の界面の比抵抗値の評価をしたいと考えました.そこで,比抵抗値が0.02,0.2,そして2Ωcmのn型Siを用意し,3種類の組み合わせで接合し,上記と同様に400度から1100度まで,アニールしながら,4端針法で比抵抗値測定を行いました.そして,4端針測定した場合の比抵抗値と界面比抵抗値との関係づけをするモデルを考案し,界面比抵抗値の評価を行いました. さらに,高比抵抗値のp型,n型Siの接合を行い,35個の素子を作成しました.これを7種の温度でアニールし,各温度5個のpn接合検出器を製作しました.電流ー電圧特性,電気容量ー電圧特性を測定し,中には90MΩ程度の高抵抗値を示す素子もあります.今後,X線を測定します. 論文,特許など I. Kanno, A. Nakayama, S. Nomiya and H. Onabe, "Resistivity Measurements of Directly Bonded Si Wafers", Jpn. J. Appl. Phys., 43, 6996-6997 (2004). I. Kanno, M. Yamashita, S. Nomiya and H. Onabe, "Interface Resistivity of Directly Bonded Si Wafers", Jpn. J. Appl. Phys., 45, 7938-7943 (2006). 出願番号 2004-249976 「半導体放射線検出器」,神野郁夫,尾鍋秀明. 平成18年度 「高計数率・高検出効率光子検出器を目指した貼り合わせ半導体素子の開発」,日本原子力研究開発機構黎明研究(代表).
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