低被曝CT用高性能検出器
(Frischグリッド付きアバランシェ検出器)

研究の背景

 ガンなどの病巣の発見にはCT検査が有効ですが,現在のCT検査では胸部レントゲン撮影時の被曝量の100倍から1000倍の被曝があります.このCT検査時の被曝量を低減し,CT検査を毎年の健康診断に組み入れる事を将来の目標として,CT用の高性能X線検出器の開発を始めました.

現在の活動

 平成13年度の日本原子力研究所原子力基礎研究制度に研究申請を行い,それが認められました.量子理工学研究実験センターと,宇都宮にある株式会社レイテックとの協力研究です.共同で特許を申請しています.
 
 低被曝CT開発のための検出器開発と,X線源の利用法の研究を行っています.レイテックでは,X線管を立ち上げて,簡単なファントムのCT像の撮影が始まりました.

 2002年5月にレイテックにおいて準単色X線を用いた測定法の実験を行いました.島津製作所より,中古のX線装置を頂戴し,自分たちの実験室でX線測定実験ができるようになりました.現在は,修士1回生の高橋君と4回生の藤永君が,Si-PINフォトダイオード検出器とCdZnTe検出器を用いて,測定法の研究を行っています.

 また,高性能X線検出器を開発するために,シリコンウエハを貼り合わせる実験を行っています.2003年10月末にファストアトムビーム装置付き真空槽が納入され,修士2回生の中山君が実験を開始しました.最初は,下側のSiが上側のSiについて上までたどり付いたものの,ピンセットで触れるとすぐにはがれてしまいました.それから,全くくっつかない期間があり,ようやく12月17日に,しっかりと貼り合わさったSiができました.今後は,成功の確率を上げていって,電気特性などの測定を行います.


研究助成
 
平成13-15年度,日本原子力研究所原子力基礎研究を頂戴しています.

論文,特許など

I Kanno, S. Maetaki, H. Aoki, S. Nomiya and H. Onabe, "Low Exposure X-ray Transmission Measurements for Contrast Media Detection with Filtered X-rays", J. Nucl. Sci. Technol., 40, 457-463 (2003).

出願番号 2003-17803 「X線撮像方法」,神野郁夫,前瀧聡,尾鍋秀明,青木久敏.

出願番号 2001-57743 「半導体放射線検出器」,神野郁夫,尾鍋秀明


 
シリコンの貼り合わせのコツをつかんだ!
 中山君とその相棒のチェンバ   青い2本のアルゴンビーム


12月17日に最初に貼り合わせに成功しましたが,その後,ひと月ほど,失敗の連続.しかし,ついに1月20日の朝,11時前に2度目の貼り合わせに成功.続いて,同じ日の2時過ぎに3度目,...,とようやく軌道に乗ってきた感じがしています.
シリコンの貼り合わせに初めて成功!
 喜びを抑えつつ隠しきれない中山君     証拠写真


修士論文の中間発表原稿を提出したあとに,初めて強い貼り合わせができました.右図のプラスチックケースを思いっきり振ってもはがれません.あとは,成功率を上げるだけです.
X線装置の導入
 遮蔽箱を組み立てる高橋君と藤永君(右)   悩む高橋君


鉛板付きのベニヤ板を使って,X線装置をいれる遮蔽箱を組み立てました.検出器をX線の軸上にセットするのが,結構たいへん.
研究助成金で購入した装置
ワイヤボンダ 2次元マルチチャンネルアナライザ




まえまえから欲しかった,ワイヤボンダ.納入時に,会社の人に説明を受け,学生がすぐにボンディングの練習をはじめました.そして,学生同士で,針に糸を入れる(これがなかなか難しい)競争が始まりました.
これも以前から購入したかった,2次元マルチチャンネルアナライザ.納入時には,手持ちのモジュールの一つがうまく動作しなかったため,α粒子のエネルギーをx-yともに測定しています.
 
  レイテックでのCT撮影が始まりました.まだ,練習ですが.
フィルムケースに
十字のプラスチック板をいれた
ファントムのCT像
左のCT像で気をよくしてトマトの撮影.
これはうまく撮れませんでした.
たったの1500くらいのデータ点から,このような画像が再構成されるのは,たいへん不思議な感じがします.
 解析ソフトは,東北工大の庄司先生の研究室で開発されたものを利用させて頂いています.
トマトの右側からX線が出てきます.トマトの左にある前後にガムテープがついているものが,検出器です.

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