本,物語


セルビアの白鷲(White Eagles Over Serbia) ロレンス・ダレル

 晶文社の「文学のおくりもの」シリーズに収められている.いつ,どんなきっかけでこの本を手にしたのかは忘れたが,すてきな物語で,わたしのfavoritesの一つである.もう10年以上,手にしていると思うが,読み返すたびに前に読んだときからの人生の積み重ねにより,味わいが増すような気がする.特に,物語の出発点のロンドン,舞台の旧ユーゴスラビアなどにたまたま訪れる機会があったこともあり,何気ない記述にうなずける.
 英語のペーパーバックでも数回読んだ.また,読み返そうと思っているところ.(1999/3/11)


カンター教授のジレンマ(Canter's Dilemma) カール・ジェラッシ

 著者は,経口避妊薬を開発した米国屈指の化学者.しかし,これを読んだのはそのせいではない.伏見の図書館で本を眺めていたら目についた.読んだらおもしろかった.
 カンター教授は60歳前の生命科学者でガンの研究をしている.ガン形成のすばらしい理論とそれを確認する実験で弟子ともどもノーベル賞を受賞するが...
 科学の一分野で辛くも身を立てている者として,いろいろと学ぶところがある物語.著者は,Science Fictionではなく,Science in Fictionの物語をこのほかにも2,3編物している.一流の科学者の手になる小説だけに,いろいろとうならされる.
 この英語の本を手に入れたくて,丸善とかに手配していたが,半年経ったのちに,絶版です,との連絡.ケンブリッジ滞在中にもケンブリッジ一番のヘッファーズに頼んだか,同じように手に入らなかった.
 米国テキサスのデントンという小さな大学町のノーステキサス大学でコンファレンスがあったときに,ダウンタウンへ行ったら古道具屋や古本屋が軒をならべているのにまず驚いた.ついで,ひょっとして,と思い,古本屋へ行ってこの本があるか尋ねたところ,困惑顔の店員に2階のコンテンポラリーの所へ行け,と教えられた.探すのが大変そうだ,と思いながら行ってみると,なんと著者順に古本が並べてあり,5分も掛らずこの本を発見.会計のため1階へ行くと,店員がだいぶ遠くから「あったの?」と尋ねるくらい,私は嬉しそうな顔をしていたようだ.古本といっても,全くページを開けた形跡が無い新古本で,18ドルの定価を9ドルで買えた.
気をよくして,ノーステキサス大学の本屋へ行ったら,なんと同じ著者の"Burbaki Gambit"を見つけてしまった. あの日は,とてもうれしかった.
 昨年11月,百万遍の知恩寺での古本市で,今度は日本語訳の「カンター教授のジレンマ」を発見.こういう喜びは,研究の喜びにも繋がると思っていますが...

背教者ユリアヌス

 博士後期課程の時に,米国アルゴンヌ国立研究所に4ヶ月滞在しました.その時に,唯一持っていった日本語の本が,この「背教者ユリアヌス」上・中・下の文庫本でした.先日,著者の辻邦生氏が,亡くなりました.私がまだ東海村にいた8年前に「フーシェ革命暦」1巻,2巻を読みましたが,それからずっと続編が出るのを待っていました.この続きを誰か,書いてくれないものか.合掌.


 まだまだ,いろいろあります.

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