京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻
核材料工学研究室

 コロイドの生成
 動植物の遺骸の分解により生じる最終生成物であるフミン酸やフルボ酸と呼ばれる腐植物質(フミン物質、天然有機化合物とも)は、地下水や土壌中に普遍的に存在し、放射性核種と相互作用します。下図にフミン酸の2次元分子構造の推定例を示します。これらは様々な配位官能基からなる複雑な構造(不均質性)をもつため、液性条件に応じた相互作用の強さをどのように定量化すべきかが課題となっています。

   
            Fig. 1 フミン酸2次元分子構造の推定例.

 私たちの研究室では、様々な官能基からなるフミン酸を単純な配位子の集まりと想定し、フミン酸の錯生成能をこれら配位子の和で表すことを試みました。これまで、3価希土類元素や4価アクチニド元素の錯生成定数を、溶媒抽出法やイオン選択性電極を用いて実験的に取得するとともに、フミン酸を構成する以下の単純な配位子との錯生成定数の加成則による解釈を進めてきました。下図はフミン酸を構成するとして仮定した9つの官能基です。 これら官能基が単独、あるいは組み合わさることによりフミン酸の配位サイトを形成するとし、表に示すような54種類の配位サイトを考えました。


         
Fig. 2 Nine basic ligands, in anionic form, assumed to complex with metal ions.



Table 1 Binding sites (54 types) in hypothetical humic substance molecules.

 金属イオン(Mn+)と単座の配位サイトL(i)または二座の配位サイトL(i)L(j)の錯生成反応は下式で定義できます。

    
また、見かけの錯生成定数β’は下式で定義されます。

   

 ここで、[MHS],[Mn+],[R-]は、それぞれ金属フミン酸錯体、錯生成していない金属イオンおよび錯生成していない配位サイトの濃度を表します。見かけの錯生成定数の実験値とモデルによる値を比較した結果の一例を図に示します。



Fig.3 Comparison of experimentally obtained β’ values for HA complexes with simulated curves; logKstr = 0.94 and λb = 0.45.



 
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