京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻
核材料工学研究室

 コロイドの生成
 4価アクチニドは強い加水分解反応により、水溶液中で様々な水酸化物錯体を形成します。このとき、単核の水酸化物錯体のみならず、多核錯体が生成します。水酸化物錯体を含む4価アクチノイドの見かけの溶解度を定量的に評価するためには、生成する多核錯体種を同定するとともにその錯生成定数を求める必要があります。

 私たちの研究室では、多核錯体を検出する手法として、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用いた測定を行っています。ESI-MS法は、高電圧をかけたガラスキャピラリーの先端から試料溶液を噴霧し、脱溶媒和管を通して質量分析部へと導くことにより溶液中の錯体構造を壊すことなく測定できる分析手法です。

   
                Fig. 1 ESI-MSによる多核錯体の検出.


下図はpH 0.57の塩酸溶液中で生成するジルコニウムの多核錯体のESI-MSスペクトルを表しています。4核、5核、10核の水酸化物錯体のスペクトルが見られています。m/z = 18毎に表れるスペクトルのパターンは溶媒の水分子の数の変化を示しています。pH条件の異なる試料溶液のESI-MSスペクトルを測定し、ピーク面積を比較することにより、多核錯体の錯生成定数を求めました。

         
Fig. 2 ESI mass spectra of Zr solution at pHc of 0.57. The overview spectrum (a) is shown with the solid lines of Gaussian curve fitting. The signs of i+ and i++ indicate [i-mer]þ and [i-mer]2þ species, respectively. The peak clusters between m/z ¼ 500{585 and 760–940 are magnified in (b).


 
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