卒業生たち


吉原文樹

平成15年3月
博士後期課程修了


現在,
理化学研究所
ポスドク
 私は平成15年3月に原子核工学専攻博士課程を卒業して,現在,独立行政法人理化学研究所で超伝導体を用いた量子ビットの研究をしています.自分自身はまだ実績を上げたわけではないのですが,今の研究室は世界をリードするような研究を行っています.
 このようなすばらしい研究室の一員となることができたことは運が良かった事もありますが,原子核工学専攻時代に幅広いことを学び,アンテナを張ることが出来たからだと確信しています.
 原子核工学ときくと応用が利かないなど悪い意味でのマニアックなイメージがありますが,実際には色々な分野の知識を得ることが出来るところです.例えば,修士の授業では,量子力学,材料工学,統計力学,流体力学,計算機工学などの様々な分野の基礎的なことが勉強できるほか,放射線計測学,加速器工学,中性子工学,原子炉物理学など,原子核らしいこともやります.私の研究テーマは放射線検出器の開発でしたが,超伝導体の薄膜を用いた素子の設計,製作から,検出器の冷却,X線の照射,信号測定およびその解析など,様々なことを行い,今の研究でもその経験や知識が大いに役に立っています.
 
松永大輔

平成15年3月
修士課程修了


現在,
堀場製作所
半導体・科学システム統括部
 大学院では極低温で動作する半導体検出器の開発を行っていました.放射線計測の勉強をするために,原子核工学専攻の講義を受けていましたが,半導体そのものの物理も理解する必要があり,電気電子工学専攻の講義も聴きにいったり,神野先生に紹介していただいて,専門の先生に 質問に行った事もありました.大学院では自分のやりたいことに合わせた講義を聴講することができましたので,学部の時に 比べて良く身につきましたし,楽しかったです.
 現在は計測器メーカーに勤めており,装置の原理開発,実験,アプリケーションを担当しております.メーカーでは機械設計,電気,ソフト,実験(アプリケーション)をそれぞれ各専門の人間が受け持って仕事を行います.大学院で学んだことは基礎ではありますが,専門の分野につながっております.少し突き詰めれば,会社内で第一人者になることも可能です.
 大学院で自分の研究に専念したことは 会社での仕事の基礎となっております.学部の時と違い,研究に没頭できる環境があります.また,大学院時代に出会った方々は自分にとって非常に大切な先生方ばかりです.
 


前瀧 聡


平成15年3月
修士課程修了


現在,
キヤノン(株) レンズ開発センター
 私は大学院では放射線の医療応用であるCTの低被曝化の研究を行っていて,原子核工学専攻の講義では放射線計測を始め多くの講義を受けました.その中で研究の基礎となる放射線に関する事はもちろん,物理や数学などについても学ぶことができました.また私の在籍していた研究室では放射線検出器の開発や加速器を用いた研究など幅広い研究が行われていたため,半導体や材料に関することなど幅広い知識を得ることができました.現在は光学メーカーに勤めており,光学関連の開発を行っています.放射線と光は親戚のようなものですが,放射線に関する知識がそのまま使えるということはありません.しかし,大学院で得た基本的な考え方は多くの場合に使えます.また会社では既存の技術でも新たな視点を持って捉えると,「おもしろい発見」をすることがあります.私が大学院で得た幅広い知識はこの「おもしろい発見」の種となっており大いに役立っています.原子核工学専攻というと専門的な知識に特化したものであると思われがちですが,実際には幅広い研究を行っており,自分の幅を広げるのに適した所でした.また先生方を始め原子核工学専攻の方々は皆刺激的な方々で,常に良い刺激を受けながら研究することができました.
 

野内 亮

平成17年3月
博士後期課程修了


現在,
岡山大学理学部
化学科 ポスドク


 現在私は科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業の研究員として岡山大学理学部化学科で日々研究に勤しんでいます.所属しているのは有機エレクトロニクスの研究プロジェクトで,私は主に走査型トンネル顕微鏡を用いた分子操作やナノスケール化学反応の制御を行ってきました.このプロジェクトに声をかけていただいたのは,原子核工学専攻の大学院生であったときに分子を用いた研究を行っていたからです.大学院生時代の私の研究は,放射線検出器を念頭に置いたものから始まったものでしたが,その後私自身の興味の変化に伴って有機エレクトロニクスの色合いを帯びてきました.そういった変化を許容してくださり,自由に研究を進めることのできる環境を作ってくださった神野先生には大変感謝しています.  
 原子核工学専攻というと,他の卒業生のコメントにもありますように,特殊な分野であると感じられる方が多いと思います.事実,原子核工学専攻で学ぶことには,原子力工学や放射線医工学などといった,他の専攻ではなかなか学ぶことのできないものが多く存在します.しかしその一方,固体物理学などといった他専攻で学ぶようなこともまた学びます.つまり,他専攻で広く学ばれていることに加えて原子核工学専攻らしいことを学ぶことができるわけです.これは私にとって非常に好ましいものでしたし,私以外の方にとってもプラスとなるでしょう.そうして得た幅広い知識が今の私の研究生活を助けてくれているのは間違いない事実であり,多角的に研究対象を眺められる力は既存のものの応用にとどまらない新しい研究を生み出す原動力となると確信しています.

木村優志

平成26年3月
修士課程修了


現在,
三菱重工業株式会社
機械・設備システムドメイン 
加速器システム課


 院での研究
大学院では、コンピュータ断層撮影法 (CT法)を用いて骨や軟組織などの人体組成をより詳細に識別する研究を行っていました。神野先生指導の下、仮説や理論を立てた上でシミュレーションや実験を行い、上手く行かなかった場合は、実験結果から改善すべきことを見つけて次の実験に反映させていくということを行っていました。改善策を見つけるには、仮説や理論が正しいか、シミュレーションと実験の条件はあっているかなど原理原則に立ち返って確かめて行く作業を身に付けました。
・仕事内容
就職先では加速器の設計開発を担当しており、主に原研、KEK、CERNなどを中心に取引をしています。お客様の仕様を満たすためには加速器に関する解析、技術検討、材料手配など様々な業務を遂行しなければなりません。特に前例が無いものを設計する場合には、原理原則に従い一つ一つ検証していく作業が必要となってきます。大学院での研究内容とは直接的な関わりは無いのですが、院で培った原理原則に立ち返る作業は仕事上でも活かすことができると感じています。
・ 専攻の印象
原子核工学専攻には面白い先生がたくさんおり、ソフトボール大会や花火大会など楽しいイベントが定期的に行われています。私が所属していた中性子工学研究室では、キャンプや旅行などを企画していました。また、桂キャンパスには綺麗なジムや体育館もあるので、リフレッシュに使用するのも良いかもしれません。
 
 
 

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