70過ぎた親に対する仕事の説明

一般の人に仕事を分かってもらうには

 私の両親は,70歳を過ぎた今も,福島県の田舎町に元気に暮らしています.両親とも大学へは行っていず,その時代の平均的な教育を受けた人たちです.親に自分の仕事を分かってもらおうと,これまで特に説明したことはありません.照れくさいし.でも,ここで,親にも分かってもらえるように説明ができれば,私のホームページを訪ねてくれた方々により一層,理解していただけると思います.

放射線物理と放射線検出器のたとえ話
 病院でレントゲン写真を撮ってもらった事の無い人はいないでしょう.レントゲン写真は,体の内部を白黒の濃淡で表します.では,どうして,目には見えない体の内部が,写真として撮影できるのでしょうか.

 まず,目で物が見える,ということはどういうことでしょうか.これは,物から光が反射してきて,その反射した光が目に入って,物の形や色がわかるのです.本や鉛筆,人の顔などの表面で反射した光をわれわれの目が観測しているのです.光は物の表面で反射されますから,われわれに見えるのは物の表面だけで,決して内部は見えません.また,反射された光を見るので,向かっている面しか見ることはできません.
 それではレントゲン写真の場合は,どう違うのでしょうか.一番大きな違いは,レントゲン写真に使う”光”は,人体を通過する,ということです.

 レントゲン写真に使う”光”は,X線と呼ばれる,エネルギーが高い光です.このX線は,人体など,原子番号が小さい原子からできている物質(人間の体は主に水素,炭素,窒素,酸素などからできています)を通過してしまいます.ですが,原子番号が大きな原子には吸収される割合が高いので,人体内部の骨などには吸収されてしまいます.このように,骨の部分ではX線は吸収され,肉の部分ではほとんど通過してしまう性質を利用して,体の反対側に写真のフィルムを置くと,その場所に当たったX線の数に従って,たくさんX線が当たった場所(肉のところ)は黒く,あまりX線が来なかった場所(骨のとこと)では,白くなります.このようにして,レントゲン写真によって,人体内部の骨などの観察ができます.この場合,われわれの目に当たるのが,フィルムです.

 さて,私の研究対象は放射線物理や放射線検出器ですが,レントゲン写真の場合の放射線検出器はフィルムに当たります.そして,放射線物理は,どうして,どのようにして写真が撮れるのか,また写真の白い部分と黒い部分とに届いたX線の数はどのくらいなのか,ということに相当します.

 このようなことを,絶縁体(電気を通さないもの,プラスチックなど),半導体(シリコンなど,テレビや携帯電話などあらゆる電化製品に用いられているトランジスタなどの材料),超伝導体(温度を低くすると,電気が非常に流れやすくなる材料)など様々な材料を用いた検出器について研究しています.

最近の研究についてのたとえ話
 これまでレントゲン写真を例として説明してきましたが,レントゲン写真は白黒の表現をしています.白から黒までの変化で,それぞれの場所にどれくらいの量のX線が来たのか,分かります.テレビと同じように,白黒よりもカラー映像の方がより多くの情報を含むことは,分かってもらえると思います.カラーで見る,ということは,光のエネルギー情報を得る,ということです.また,カラーで見る,といっても,赤,青,黄色だけでは3つのエネルギーしか区別できませんが,赤みが勝った青,など微妙な色合いが分かるように見ることで,さらに詳しい観察ができます.このように,光のエネルギーの違いを細かく見ることを,放射線検出器の研究では,「高いエネルギー分解能で測定する」といいます.私は,高いエネルギー分解能で測定できる放射線検出器の開発を行っています.

 これまでの説明でも,わかりずらいよ,と感じる方は,ご連絡ください.さらによく分かっていただけるように,書き直します.

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